チケット管理ツール再考察 YouTrack vs ClickUP

ソフトウェアエンジニアの @xhiroga です。
保険SaaS joinsureのプロダクトを新規開発するにあたって、チケット管理ツールを再選定したので記録に残します。網羅的とは言い難いですが、多少なりともお役に立てば幸いです。

結論

  • YouTrack, ClickUpともにプロダクト開発に十分利用できる
  • YouTrackはデータ構造が、ClickUpはWebベースのUXが勝る
  • 複数人・複数チームでの開発ではYouTrackが、小規模開発ではClickUpが向いていると判断した

前提

joinsureの開発はスクラムで行っています。
したがって、BizDev, PdM, デザイナー, エンジニアの全関係者が同じボードを使えると望ましいです。例えば、「カスタマーサポートに寄せられたご意見の分析」「ユーザーストーリーからオブジェクトを抽出する」といった仕事もチケットで管理したい、というわけです。

さらに言えば、バックオフィスではAsanaを使っており、これを統一したい思いもありました。

また、justInCaseは(主にWeb版のUXの悪さを理由として)過去にJiraからYouTrackに移ってきた経緯がありました。したがって、メンバーがストレスなく使えることは強く意識していました。

比較

YouTrackとClickUpを、それぞれ1年/半年利用して感じたPros/Consです。

YouTrack

Pros

  • データ構造が優れている。具体的には、プロジェクトとボードの関係性が1:1ではなく、1:Nである。
    • Jiraなどではどんなボードを見たいかを考えてからプロジェクトの単位を考える必要がありましたが、YouTrackではボードに表示するチケットが所属するプロジェクトをクエリで指定できます。プロジェクト設定で余計に悩むことが減り、ありがたいです。
  • 全体的に柔軟なカスタマイズが可能。プロジェクトに任意の型の属性を追加したり、ダッシュボードやレポートを作成したり、スプリントの期間を自由に指定できたり、等々。
  • JavaScriptライクな記述ができる、柔軟なワークフロー

Cons

  • 設定が柔軟すぎて、初心者がプロジェクトを設定すると何かしら間違いが起きる。
    • 例えば、権限の設定ミスでボードが見えなくなる事故が年に3回くらい起きる。
  • ちょっとしたサービス間連携にもスクリプトを書かされる。
    • いまどきSlack通知やGitHub連携はWeb画面からポチッと設定できて当然だが、(一部例外はあるが)JavaScriptを書かないといけない。
  • ネイティブアプリがありえないくらい使いづらい。もっさりしている上に必要なボタンが探しづらいUI/UX。

ClickUp

Pros

  • 開発者向けツールと一般的なタスク管理ツールのいいとこ取りといった印象
    • Web画面のUI/UXがよい。チケットの編集ひとつとっても、YouTrackに比べて表示が大きく、操作がしやすい。
    • 繰り返しタスクも作れるので、営業やバックオフィスの人にも使ってもらえるかも。
  • 2017年の創業だけあり、Webサービス間連携はコンソールからポチで可能。
  • ゲストを招待できる。例えば特定のボードに対して、社外の人に参照権限を渡すことが出来る。
  • 比較サイトでのレビューが圧倒的に良い
    • G2 Crowdでレビュー数が約100倍あり、レートもYouTrackに勝っている。
    • 単なる人気ではなく、開発者以外でも使える間口の広さが反映されていることは考慮すべき。

Cons

  • プロジェクトとボードが紐ついており、例えばチケットをスプリントに移動すると、元々どのプロジェクトに紐ついていたかわからなくなってしまう
    • これにより、プロジェクトをエピックやユーザーストーリーに見立てる運用ができなくて辛い。
  • 2021年現在、同時編集にバグがある。正確なことは不明だが、複数人で編集していると操作(チケットを完了にする、スプリントを閉じる、など)が何度やっても反映されないことがある
    • これがスクラムイベント中に多発するので本当に困る
  • チケット番号が数字ではないため、GitHubの機能でチケット番号をリンク化することができない。

評価

両方ともいいところと悪いところがハッキリしており、(いいとこ取りのツール出てこないかな...)と本当に思いました。笑
業務に差し支えるのはどちらかと考えると、複数人・複数チームでの開発ではClickUpの欠点(特にプロジェクトとボードの関係性とバグ)が問題になると考えています。比べると、YouTrackの欠点は運用でカバーできる範囲ですね。

結論

justInCaseでは久しぶり(1年ぶりは当社では久しぶりです)のチケット管理ツールの見直しでしたが、YouTrackを続投する、という結論にいたり、そのようにチームメンバー・他チームの皆さんにも共有した次第です。

一方、チケット管理ツールのような激戦区のSaaSでもこれだけ改善できるポイントがあるのだな、と、今回比較して少し意外な気持ちになりました。
ましてや保険業界のSaaSともなれば、改善すべきことは山積していますね!

justInCaseではツールへのこだわりのある素敵なメンバーを大募集しています。なにかのご縁ですので、ぜひ一度お話できれば幸いです🙏